現代に蘇る.45伝説【クリス・スーパーV べクター】
スイスのガンマ・インダストリー傘下の銃器メーカー・TDI(Transformational Defence Industries:現クリスアームズ)社主導により、官民共同で開発された短機関銃。
拳銃弾の中で特に.45ACPは高い威力と消音効果を持つが、発生する反動も大きいため、軽量な銃で制御するには困難だった。
TDI社では法執行機関や軍組織向けの新しい短機関銃を設計し米国にて販売するため、トンプソンやMAC10などの.45口径を使用する短機関銃に関する開発・実戦データを蓄積している米ピカティニー造兵廠の開発研究部門との提携を行い、2006年より開発がスタートした。
本銃最大の特徴は「クリス・スーパーV」という反動吸収システムにある。
これは銃本体にグリップフレームが覆い被さり、銃身とグリップを一直線上に並べる特異なレイアウトとするための機構であり、この機構を使わないリコイルシステムでは、ボルトの動作のため前後に長いストロークが必要となり、非常に長大な銃となってしまう。
そこでボルトの動作を縦方向に変換し、前後長を抑えコンパクトなサイズを維持するシステムである。
このシステムは発砲時、ボルトが後退する代わりに、運動エネルギーを下方向に変換される仕組みであり、発砲リコイルを腕と肩の一直線で受け止められるため、反動を大幅に抑制し、高い反動低減効果を実現した。
H&K MP5との比較テストでは9mm×19弾を使用するMP5に対して、銃口の跳ね上がりが90%減少し、伝わるリコイルショックは60%少なかったと言われている。
製品化にあたっては、高品質な小火器用樹脂製アクセサリーで知られるマグプルが、プロトタイプからの最終的な改設計を行った。
現代小火器の定番となったレールシステムやアンビタイプのセーフティレバーを標準で備え、銃身上にライトを差し込むことが可能。
独特なレイアウトゆえセーフティ等の操作は、基本的に左手側で行う前提となっている。
マグリリースもマガジンハウジングを把持した手で操作する為、リリースしたマガジンを手で回収することも難しくなっている。
このため、サードパーティからは延長マガジンリリースも販売された。